ぷち心理学タイトル 44.会話で気持ちがすれ違うとき
 子どもができると,いろいろな人とコミュニケーションをとる必要が生まれてきます。ママ友や保育園あるいは幼稚園の先生方といった人々との新たな人間関係もできますし,夫の両親・きょうだいや親戚とも,子どものことでやりとりがふえることでしょう。価値観の違う人,年齢の離れた人とどうつき合っていくか…ママたちが頭を悩ませる問題の1つではないでしょうか。
 自分の元々の家族や友人との間ではすぐ通じる話が通じなかったり,なんだか話題が合わなかったり,といった経験をするママたちは少なくないでしょう。中でも,ママたちを悩ませるのは,会話の中で生じる気持ちのすれ違いかもしれません。たとえば,こんな話があります。
 よそのお宅で出されたお料理がとても美味しかったので,思わず「これ,ヤバい!」と口走ってしまい,相手が微妙な表情を浮かべたというケース。笑顔でそう言った本人は,「すごく美味しい」というつもりだったのですが,相手は,やや年配の方だったこともあり,「まずい」「危険だ」といった意味に解釈したようです。相手の表情に気づいて,慌てて取り繕っても,なんだかギクシャクした空気が流れたままで…。このように,世代間で意味の異なる言葉は,要注意です。
 また,「気が置けない」という表現にも注意が必要です。「Aさんって,気が置けない人」と言う場合,本来は「気兼ねのいらない人」という,よい意味になります。ところが,「気を遣わねばならない人」あるいは「信用できない人」と,誤って悪い意味で受け取られる場合が,けっこうあるのです。
 私は長年,誤解事例を収集し分析しているのですが,人と人とのコミュニケーションにおいては,驚くほどの誤解が生じています。そして,すぐに誤解だと気づいて事なきを得るならいいのですが,実は,誤解であるということに気づかず,両者が何となく気まずくなり,疎遠になったというケースが少なくないのです。
 まったく悪気はないのに,ちょっとした言葉の行き違いで気持ちがすれ違ってしまうという悲しさ。それを避けるには,ほんの少し立ち止まって,「この表現,相手はどう受け取るかな?」と考えてみることが役に立ちそうです。
(2015年 Happy=Note 夏号 p.139)