集中する力とは:注意のコントロールに向けて


3.注意についての授業の試み

 お母さんの説明に加えて、実際にA君と会って話し、また、彼の勉強部屋の様子を見ることで、多くの手がかりがつかめた。これで、問題の改善に向けて、ある程度見通しが立った。彼が学習に集中できない原因を整理すると、おおむね以下のようになる。
1)(注意を)集中するとはどういうことかが、十分理解できていない。
2)注意の集中が学習活動(見る、聞く、覚える、理解する、考える、など)に及ぼす影響が理解できていない。
3)注意の促進要因と阻害要因が理解できていない。
4)注意のコントロールができていない。
 A君は、お母さんが言うように、けっして理解力の低い子ではない。また、カブトムシの観察など、本当に関心を持ったことには集中できるようである。5年生の彼にもわかるような説明をすれば、「注意」という目に見えない抽象的な概念を理解し、その重要性に気づき、自らの意志で注意をコントロールするようになることが期待できる。
 私は、お母さんと相談の上、A君の同意を取り付けて、彼に「注意についての授業」を試みることにした。幸い、五・六年生用に開発した「考え方学習」の教材(1)の一部も援用できそうである。

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