ぷち心理学タイトル 16.話しかければ心が育つ
 言葉を話せない赤ちゃんは,泣いたり笑ったり,手足をばたつかせたりして自分の気持ちを表します。言葉を介さない非言語的コミュニケーションですね。そして,1歳頃から少しずつ言葉を理解し始めますが,2歳くらいでもまだ,言葉を使って気持ちを理解したり表現したりすることは十分にはできません。では,言葉による気持ちの理解や表現は,どのように発達するのでしょうか。
 ダンというイギリスの心理学者たちは,このことを調べるために,幼児とそのお母さんの会話を観察しました。まず,3歳の時点でお母さんが自分の子どもと話すときに,「嬉しい」「悲しい」などの気持ちをどれくらい話題にするかを分析しました。次に,その子が6歳半になった頃,その子自身がどれくらい人の気持ちを理解し表現できるかを調べました。このとき6歳半の子どもに出した課題は,他の人どうしがやりとりしている会話を聞かせて話し手がどんな気持ちなのかを自由に言わせるというものでした。すると,気持ちを話題にすることの多いお母さんの子どもほど,気持ちをうまく表現できることがわかりました。つまり,日頃から会話の中に気持ちを表す表現がたくさん出てくるような環境で育った子どもは,気持ちの理解や表現が上手にできるということが確認されたのです。
 多くの場合,まず,相手が使った言葉を理解できるようになり,それから自分でその言葉を使えるようになります。ですから,気持ちを表す表現についても,理解できる言葉の範囲を広げてあげることが大切です。
 相手の気持ちを察して言葉で表現できること,自分の気持ちを言葉で相手に伝えられることは,まわりの人々とよい人間関係を築いていくためにも,とても大切なことです。ママをはじめとして,子どもを取り巻く大人たちが,日常生活の中で,さりげなく気持ちを言葉にするお手本を見せてあげたいですね。たとえば,「パパにお人形買ってもらって嬉しいね」「お熱があるから,○○ちゃん,お外に行けなくて悲しいね」などというように。
(2008年 Happy-Note 夏号 p.60)