2.「はい」と言わせる3つのテクニック

ウラシマ
プリント
「プリントを見てみよう。」
ウラシマ
「1つ目は,フット・イン・ザ・ドア・テクニックといって,まず,誰もが受け入れるような小さな要求を出して受け入れさせ,次に目的とする大きな要求を出すという手法です。たとえば,こんな実験があるんだ。一軒一軒に電話をかけて家庭の主婦に,
「お宅で使っている石ケンについて簡単なアンケートに答えてほしい」
という小さな要求をはじめに出して受け入れてもらう。それから,
「お宅に伺って日用品・家財道具などの調査をしたいので2~3時間協力してほしい」というめんどうな要求を出すんだ。すると,最初からこの要求を出した場合には22%の人にしか受け入れてもらえないのに,はじめの要求のあとに出した場合には,53%もの割合で受け入れてもらえたんだよ。"foot-in-the-door" というのは,「ドアの隙間に足を差し込む」という意味なんだ。つまり,足を一歩踏み入れることができたら,あとはしめたもの,体もドアの内側に入れてもらえるよ,という感じだね。」

「次に2つ目のテクニック。これは,ドア・イン・ザ・フェイス・テクニックといって,まず,誰もが拒否するような大きな要求を出して拒否させ,次に目的とする比較的小さな要求を出すという手法です。これも実験で確かめられている。大学のキャンパスを歩いている学生に,
「2年間続けて毎週2時間,非行少年のカウンセラーをつとめてほしい」
というたいへんそうな要求を出してわざと断らせたあとで,
「それではせめて,非行少年のグループを動物園に連れて行くのを,2時間ほど手伝ってほしい」
という要求を出す。すると,いきなりこの要求を出した場合に受け入れられる割合がたったの17%であるのに対して,このような段階を踏むと50%まではね上がったんだよ。驚きでしょ。あ,それから,"door-in-the-face"というのは,顔の前でドアをバタンと閉めるという意味なんだ。つまり,こちらからの依頼を,いったんはドアをバタンと閉めるように相手にはっきりと断らせ,「ちょっと気の毒かな」という気持ちにさせておいて,それから交渉を始めるといったところかな。」

「3つ目は,ローボール・テクニックといってね,まず,非常に魅力的な,あるいはあまりめんどうでない行動の選択肢を用意してそれを受け入れさせ,次に何らかの理由をつけてその魅力的な側面を取り除いたり,もっとめんどうなものにした後でもう1度選択させる,という手法です。実験としては,次のようなものがあるよ。高層の学生アパートの最上階まで行って,
「あなたの部屋のドアにポスターをはらせてほしい」
という要求をまず受け入れてもらった後で,
「実はポスターは一階の受付にあるので,それを自分で取ってきてはってほしい」
という少々めんどうな条件を出すんだ。すると,いきなりめんどうな要求を出した場合の受け入れが20%止まりなのに対して,あとからめんどうな条件をつけた場合には,60% もの学生が受け入れてくれたんだ。」
「さて,ここで問題。さっき見たビデオで使われていたセールス・テクニックはそれぞれ,この3つのうちのどれだろう?
生徒
「うーん,どれだろう。」

(回答はこちら)

ウラシマ
「さっき紹介した実験では,主婦や大学生が対象になっていたけど,この3つの方法は,いろいろなバリエーションがあるんだよ。たとえば,君たちにとってもっと身近な例もあるだろう。買い物をする時,上手なセールストークに惑わされたり,また,何かの会員になってくださいと頼まれたり。そんな時には,今日の話を思い出して,よく考えようね。では,なぜそうなるのか解説しよう。」」
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