集中する力とは:注意のコントロールに向けて


1.ある相談

 ある日の夕方、私の研究室をA君のお母さんが訪ねてきた。小学校五年生のA君は何かにつけて注意が散漫で、勉強にも集中できないが、どうすればよいかとの相談である。
「息子は、けっしてできが悪い方ではないんですが、何しろ落ち着いて勉強に取り組むということがたいへん苦手で...。」
「なるほど、落ち着いて学習に取り組めないんですね。具体的には、どんな様子ですか?」
 お母さんはA君の状況を説明してくれた。そして、相談にやって来たのは息子のお尻をたたいて勉強させるためではなく、けっこう利発なA君に、なぜ集中力がないのかが不思議で、なんとかもう少し勉強に集中できるようになって、力を発揮できないものかと考えたからだと言う。
 私は、おおよその事情はわかったが、A君本人からも話を聞いてみる必要があると答えた。幸い、A君の家はそれほど遠くはない。次回は、家庭訪問を兼ねてA君に会うことにした。

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