集中する力とは:注意のコントロールに向けて


2.A君に会う

 一週間後、私はA君の勉強部屋にいた。小学生の部屋としてはかなり恵まれている。コンピュータやCDプレーヤー、小型テレビまで置いてある。大きな机の上には、恐竜の模型や小型ゲーム機、アニメのキャラクター・グッズが並んでいる。5年生にしては、少し幼い感じのするA君は、私の問いかけに、わりに素直に答えてくれた。
「机の上、にぎやかね。机に向かって勉強するときには、ちゃんと集中してる?」
「うーん、どうかな。してると思うけど。わかんない。」
「勉強中、部屋は静かにしてる?」
「ううん。好きなCDかけたり、テレビ見ながら勉強することもあるよ。」
「そんなことして気が散らないの?」
「気が散るっていうか、その方が楽しく勉強できると思う。」
(机の上に好きなものをたくさん並べているのも、楽しく勉強できるためとのことだった。)
「勉強、楽しくない?」
「うーん、そうでもないけど。」
「学校の授業はちゃんと聞いてる?」
「いろいろ。友達と話したりしながらだって、聞いてることもあるし。」
「お友達と話しながら、先生の話ちゃんと聞ける?」
「うん、聞けるよ。」
..............
 A君との会話で、予定していた一通りの質問に答えてもらった後、お母さんと合流した。彼女は、一冊のノートを見せてくれた。
「これは、Aが三年生の夏休みに自発的に作った観察日記のようなものなんです。これを書いているときには、それはそれは熱中していたんですが...。」
ノートの表紙には大きな字で「カブトムシのけんきゅう」とある。ページをめくると、カブトムシの絵や観察記録が克明に記されていた。

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