主要編著書紹介
『メタ認知:学習力を支える高次認知機能』(三宮真智子編著)北大路書房 257頁3000円+税
メタ認知の概念が心理学の中に現れたのは,1970年代のことであり,以後,多少曖昧ではあるが大きな期待を抱かせるこの概念に,魅了される研究者や教育実践家が増え続けることになりました。しかしながら,人々の関心を集めれば集めるほど,メタ認知概念の実用的価値への期待が先行する一方で,心理学の複数領域におけるメタ認知研究が,有機的な関連性を欠いた状態で個別に進められてきたこともまた否めない事実でしょう。そして現在,メタ認知研究は,さまざまな領域において,まさに爆発的な広がりを見せ始めています。
このような状況を鑑み,本書は,認知心理学,教育心理学,学習心理学,発達心理学,言語心理学,臨床心理学,障害児心理学,神経心理学といった多岐に渡る研究領域を視野に入れ,特に学習に関連するメタ認知研究の現状と課題を論じたものです。
本書が目指したのは,学習に関連したメタ認知の理論研究から応用研究までを幅広く網羅し,私たち著者自身の研究も含めて最新のメタ認知研究の成果を系統的に紹介することです。主な読者としては,メタ認知に関心を持つ研究者,大学院生,卒論生,教育関係者を想定していますが,その他の読者にとっても読みやすい専門書となることを目指しました。学術的な内容をわかりやすく解説し,読者の正確な理解を助けるとともに,日常の学習場面においてメタ認知を活用するための示唆を提供することを目的としています。
本書は,主として学習との関連からメタ認知を論じています。学習におけるメタ認知の問題を考える際に手がかりとなる12のトピックから構成されており,それぞれが独立した章となっています。
<各章のタイトルと執筆者>
1章 メタ認知研究の背景と意義(三宮真智子)
2章 学習におけるメタ認知と知能(三宮真智子)
3章 知識の獲得・利用とメタ認知(藤村宣之)
4章 学習方略とメタ認知(瀬尾美紀子・植阪友理・市川伸一)
5章 学習における動機づけとメタ認知(上淵寿)
6章 文章の理解におけるメタ認知(秋田喜代美)
7章 数学的問題解決におけるメタ認知(岡本真彦)
8章 科学的思考と科学理論の形成におけるメタ認知(湯澤正通)
9章 談話の算出・理解におけるメタ認知(仲真紀子)
10章 学習の障害とメタ認知(田中道治)
11章 認知行動療法とメタ認知(杉浦義典・杉浦知子)
12章 メタ認知の神経科学的基礎(渡邊正孝)