思考の創造性:豊かで柔軟な発想が生まれる条件


4.メタ認知で創造性を高める

 思考における創造性を高めるためには,創造的に考えさせるための環境をまず整えることが,大きな助けになる。そしてさらには,子どもたちが創造的思考を正しく理解し,創造的思考の方法論を自分に合った形で取り入れることによって,自分自身の創造性を高めていく力を身につけさせることが重要である。これは,言い換えれば,創造的思考についてのメタ認知を促すことである。
 具体的には次のようなことが考えられる。

(1)創造的思考のメカニズムを理解させる
 創造的思考を理解するためにはまず,創造的思考がどのようなメカニズムで働くかを知っておく必要がある。たとえば,創造的思考が,いくつかの段階を経て達成されることを知っておくことは重要である。よく知られるものとして,次の「ワラス(Wallas,G.)の4段階」がある。

・準備期:まず,創造しようという意欲を持ち,必要な情報を集めたり技術を備えたりして,問題解決に熱中する。
・あたため期:いったん問題から離れ,一見問題とは無関係なことをしながら,考えが熟して自然に出て来るのを待つ。
・ひらめき期:突然,創造的な問題解決法がひらめく。しかも,その考えは強い確信を伴う。
・検証期:ひらめいた考えを吟味し,これが正しいことを検証する。

 こうした知識があれば,現在自分がどの段階にあるのかを知り,意識的に次の段階に進むことも可能になる。

(2)創造的思考の方略や支援ツールを理解させる
 ブレインストーミング法やKJ法,NM法などの技法から,より一般的な形で創造的思考の方略を抽出すれば,次のようになるだろう:「創造的思考のためには,まず多くのアイデアを絞り出し,評価はあと回しにすること,連想を働かせ,すでに知っているものとのアナロジーを意図的に活用すること,考えたことを,他者にもわかる形で外に出すこと(外化:externalization),外化した考えの編集作業を行うことなどが有効である。」
 こうした方略を子どもたちが理解し,自分流に工夫するよう仕向けることが重要である。また,創造的思考の支援ツールとしてコンピュータを活用することも大切である。たとえば,思考の外化や編集のためには,きわめて有効なツールとなる。

(3)創造的思考をモニターし,コントロールする習慣をつける
 創造的思考をより効果的に行うためには,自分の思考を対象化してモニターしたり(思考の自己観察),自分でコントロールしたり(思考の自己制御)することが必要である。 「ワラスの4段階で言えば,今,自分はどの段階にいるのだろう」「自分はまだ固定観念にとらわれているのではないか」といったメタ認知的なモニタリングや,「もっと違う観点から問題をとらえ直してみよう」「いったんこの問題から離れて,他のことを考えてみよう」といったメタ認知的なコントロールを行う習慣が身につけば,創造的思考力は飛躍的に増大する。

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