ぷち心理学タイトル 45.心のブレーキがきかなくなる前に
 子育て中のイライラを誰にも話すことなく我慢したり,夫と考えが食い違って口論になりそうなのをぐっとこらえたり,あるいはまた,自分の気持ちを押さえ込んで,ニコニコしながら周りの人たちに合わせたり,といったことが積み重なると,ある日,理由もなく怒りが収まらなくなり執拗に子どもを叱ってしまった…,そんな経験はありませんか? 私たちは,毎日の生活の中で,理性を働かせて,意志の力で自分をコントロールしています。もちろんそれは大切なこと。けれども,意志力を使い過ぎると心が消耗して,疲れ果ててしまいます。心理学者のバウマイスターたちは,このことを「自我消耗」と名づけました。
 自我消耗については,後の心理学者たちによって,さまざまな実験が行われています。たとえば,難しい課題に我慢して取り組むと,自由に選ぶことのできる2種類のデザートのうち,フルーツサラダよりもチョコレートケーキを選んでしまうことが明らかになっています。他にも,我慢を強いられた後では,通常よりも理性的でなくなる,つまり自分のやりたいようにすることがわかりました。
 このように私たちは,自分の気持ちを抑えつけてがんばっていると,あたかもその反動のように,自分を抑えられなくなることがあります。意志力を働かせ過ぎると,一時的に心のブレーキがきかなくなると言うこともできるでしょう。そのため,ふだんなら「もうこれくらいで,やめておこう」というスウィーツの適量をいとも簡単に超えて食べてしまったりするのです。甘党ではなく辛党の人であれば,アルコールを飲み過ぎてしまうということになるでしょう。また,ダイエット中にもかかわらず大食いをする,服やバッグや靴を衝動的に買うといった行動をとってしまい,後から後悔のため息を漏らすかもしれません。
 意志を強く持てるように少しずつ自己訓練するのはいいのですが,心が疲れてすり減ってしまうほど我慢を重ねるのは,考えものです。がんばり過ぎたなと感じたら,気分転換をはかるなど,自分の心を休めてあげることをお勧めします。意志力は,けっして無尽蔵ではないのですから。
(2015年 Happy=Note 秋号 p.37)