ぷち心理学タイトル 43.ダメと言われたことをしたくなるのはなぜ?
 「お砂場遊びはもうやめて,帰らなきゃダメよ」「これ以上お菓子を食べてはダメ」などの言葉は,子育ての最中にはよく出て来ますね。ところが皮肉なことに,「ダメ」と言われるとよけいに,子どもがそれをしたがるという「法則」に,気づいたママは多いのでは?なぜこんなことが起こるのでしょうか?
 実は,禁止されるとかえってそれをしたくなるという傾向は,小さな子どもに限ったものではありません。私たちおとなも,よく考えてみれば覚えがあるはず。その昔,親から「夜更かしはダメ」「朝寝坊はダメ」と言われれば,かえって遅寝遅起きをしたくなったり,「そんなものを買ってはダメ」と言われて,何だかよけいに買いたくなったり。逆に,「こうしなさい」と言われると,なぜかそうしたくなくなった経験もあるのでは?
 このような現象は,私たちの心が自由を求めているために起こるものです。人間には本来,強制されたくない,自分の意思で自由に決めたい,という欲求があり,この自由が脅かされると,反発を覚えるものなのです。心理学者のブレームは,このことを「心理的リアクタンス」と呼びました。リアクタンスは抵抗という意味ですから,心理的リアクタンスは,自由の侵害に対する心理的な抵抗といった意味合いになります。これは,多少の個人差はあるものの誰にもあてはまり,しかも,きちんと自我が形成されている証拠とも言えます。度を超さなければ,あまのじゃくや反抗的といったものではなく,ごく普通のことなのです。いわゆる「ロミオとジュリエット効果」(周囲の反対によって恋愛感情がいっそう強まる効果)も,そのひとつです。
 子どもを育てる上では,この心理的リアクタンスの原理を知っておくことが大切です。「ダメダメ」を言い過ぎるのは,場合によっては逆効果。あることをやめさせたければ,むしろ,他のことに気持ちを移させるよう仕向ける方がいいでしょう。たとえば,砂遊びをそろそろ打ち切らせたければ,「そうだ,おうちに美味しいおやつがあったんだ!ねえ,ママだけ先に帰って食べちゃってもいい?」など,なるべく強制的ではない言葉かけを工夫してみてはいかがでしょう。
(2015年 Happy=Note 春号 p.83)