ぷち心理学タイトル 33.「斜めの関係」を育てるために
 今はまだ小さくても,あっという間に大きくなる子どもたち。小学校高学年くらいになると,いわゆる思春期を迎えます。心と体のアンバランスから,気持ちの揺れが大きくなり,不安定になることもあります。少し前までの子どもっぽい無邪気さは影をひそめ,急に無口になったり,親の干渉を嫌うようになることも。
 「いったい,どうなってしまったの?」
と,戸惑うママたちもいるようですが,これは健全な発達を遂げている証拠。ちゃんと大人への移行期に差しかかっているからこそ起こる変化ですから,心配はいりません。
 とは言え,思春期の子どもは,友人関係(横の関係)などで傷つき悩みやすくなり,ひとりで思い詰めることも少なくありません。そんなとき,親や教師といった「縦の関係」にある人には,相談しづらいもの。特に親は距離が近すぎて,また,子どものことが心配で根掘り葉掘り尋ねることも多く,かえって話しづらいこともあります。
 ここで,「斜めの関係」が役立ちます。斜めの関係とは一般に,親戚や近所のおじさん,おばさんを代表とする,家族ではないけれど親身になってくれる年上の人を意味します。
 親と違って子どもに指図することもなく,同じ目線で適度な距離感を持って話を聞いてくれるため,反抗的になりがちな思春期の子どもも,こうした人には話しやすいものです。
 悩みを打ち明けるとまではいかなくとも,斜めの関係の人に話を聞いてもらうだけで気が晴れたり,また,役立つアドバイスをもらえたりします。親や先生とは違った視点からものを言ってくれることも多いため,「あ,そんな考え方もあるのか」と,子どもは多様なものの見方に触れることができます。斜めの関係の人との何気ない会話から,視野が広がり気持ちが楽になることもあります。
 でも,このように頼りになる斜めの関係は,急にでき上がるものではありません。子どもが小さいうちから,親戚や近所のおじさん・おばさんと接する機会を多くして,親しい間柄になっていればこそ,いざと言うときに威力を発揮するのです。親以外にもわが子を見守ってくれる大人たちとの関係づくりを,ぜひ,子どもが小さいうちから心がけたいものですね。
(2012年 Happy-Note 秋号 p.108)