ぷち心理学タイトル 15.人の心がわかるということ
 「子どもって,いつも相手のことなんかお構いなしなんだから」
こんな風に感じたことはありませんか? たしかに,小さい子どもに相手の立場に立って考えなさいと言っても,なかなかうまくいきません。では,相手の立場に立てるようになるのは,いつ頃からなのでしょうか。
 このことを調べたウィマーとパーナーの心理学実験を,わかりやすい形に変えて紹介しましょう。まず,子どもに,次のようなお話を聞かせます。「ユウタくんが台所の青い箱にチョコレートを入れて遊びに出かけました。ユウタくんが出かけた後で,ユウタくんのお姉さんが戸棚からチョコレートを見つけ,少し食べた後,今度は青い箱ではなく赤い箱にチョコレートを入れました。お姉さんが出かけた後,ユウタくんが戻って来てチョコレートを食べようと思いました。ユウタくんはチョコレートがどこにあると思っているでしょうか?」 
 この問いに対して,個人差はありますが,4歳までの幼児の多くが「赤い箱」と答えます。それは,子ども自身が「チョコレートは今,赤い箱に入っている」ことを知っており,それを知らないユウタくんの立場に立って考えることができないためです。一方,4歳を過ぎると,「青い箱」と正しく答える子どもが増えます。このように,自分とは異なる別の人の立場に立ってものごとを考えることができるのは,「人にはそれぞれ別の心がある」ということが理解できるようになったからです。他者の考えていることや望んでいることを推測し,行動を予測できるようになることを,心理学では「心の理論」が形成されたと言います。心の理論が,まだ十分に形成されていない幼児には,他者の立場に立ってものごとを考えることがうまくできないのです。
 ですから,小さい子どもが身勝手に見えるのは,性格的なものというよりは,まだ発達的に未熟だからだととらえることが大切です。そうした段階の子どもに対しては,まわりの人々とのやりとりを通して,「わたし(ぼく)とは違う心を持つ人がいるんだ」ということを,少しずつ感じさせてあげるといいですね。
(2008年 Happy-Note 春号 p.60)