ぷち心理学タイトル 3.才能をほめる
 ファッションデザイナーのコシノ3姉妹をご存じでしょう。ヒロコさん,ジュンコさん,ミチコさんの3人です。先日,あるテレビ番組で,長女のヒロコさんがトップデザイナーとしての地位を固めるまでの半生が紹介されました。
 戦争でお父さんが亡くなり,お母さんのアヤコさんがコシノ洋装店を切り盛りして3人の娘さんを育てられました。絵をかくことが好きだったヒロコさんは,当時まだ知る人の少なかったファッションデザインの道に進もうと決意します。ところが,なかなか思うようにはいかず,すぐ後を追って来た強力なライバル(妹のジュンコさん)にも先を越され,悔し涙に暮れることもあったようです。しかし,そんな中でも,劣等感を持ったりあきらめてしまったりすることはありませんでした。自分の才能を信じ,気持ちはいつも前向きだったのです。そしてついに,世界に踏み出すチャンスが訪れたというわけです。
 多くの人が,チャンスの到来を待たずに自分からあきらめてしまう中で,なぜヒロコさんは自信を持ち続けることができたのでしょうか? その答は,お母さんのほめ言葉にありました。子どもの頃のヒロコさんが絵をかいて見せるたび,どんなに忙しくても,わが子の「作品」を熱心に見つめ,「うまいなぁ」と心からのほめ言葉をかけたのです。このことが,ヒロコさんの心に,自分に対する期待や自信(心理学では,これを自己効力感と呼びます)を育てたのです。
 幼いこどもにとって,一番の判断基準は親の言葉です。せっかく上手に絵をかいても,親がほめてあげなければ,「自分はうまくないんだ」と思い込んでしまいます。
 子どもの才能を伸ばすためには,親のほめ言葉は欠かせません。
(2005年 Happy-Note 春号 p.50)